生産者探訪

まろやかな甘みと茶本来の味わい「ぐり茶」

伊豆北川温泉の絶景宿「望水」の客室でお飲みいただくお茶や、茶香炉の皿に載せるお茶は、静岡県・伊東で茶の加工と商品開発・販売を営む創業100年を超える老舗「市川製茶」の「ぐり茶」を使用しています。

1. 甘くて優しいぐり茶

正式名称を「蒸し製玉緑茶」という「ぐり茶」の製造には、茶葉がお茶になる工程の一つ「揉む(精揉)」がありません。代わりに「再乾(さいかん)」という工程において、ドラム缶を横にしたような「再乾機」の中で熱風で炙りながら茶葉を丸めます。丸めた時の形が「屈輪(ぐり)」と呼ばれていた「勾玉(まがたま)」の形に似ていることから「ぐり茶」と言われるようになりました。ちなみに一般的な煎茶は前後の一方向に撚るので茶葉が細長い針のような形状となります。

ぐり茶は茶葉を丸めるために柔らかい葉を使うのと、何度も機械に入れないことにより、優しくて丸く甘い味がします。

2. 茶葉を摘んでからお茶ができる工程

指定工場で行う前工程「荒茶」と、伊東の市川製茶工場で行う工程「仕上茶」のがあります。

▼荒茶の工程

1 茶葉を刈る|4月下旬〜5月上旬に一番茶のお茶の葉を刈り取ります。

2 蒸す|つみたての葉に蒸気を当てて蒸し、発酵を防ぎます。

3 揉む(粗揉 そじゅう)|熱風を当てながら葉を揉み、水分を飛ばします。

4 揉む(揉捻 じゅうねん)|茶葉に力を加えて揉み、水分が均一になるようにします。

5 揉む(中揉 ちゅうじゅう)|茶葉の表面に浮き出た水分を乾かすため回転させながら熱風を当てます。

6 揉む(精揉 せいじゅう)|茶葉を細くなるように機械を前後に動かしてさらに乾燥します。ぐり茶は精揉の工程はなく、再乾(さいかん)といい、精揉と違って遠心力で丸めるように乾燥させます。この工程でぐり茶は茶葉が丸くなります。

7 乾燥|十分に乾燥させます。

ここまでが指定工場で行なっています。乾燥させた「荒茶」の茶葉を伊東の工場の冷蔵庫で保管します。

粉も棒も混ざっている「荒茶」の状態で試飲してみました。いろいろ混ざっているので雑味がありました。ここからは「仕上茶」の工程を少しご紹介。

8 仕上げ(篩い分け)|「平行篩機(へいこうふるいき)」で葉を大きさ別に分けます。

9 仕上げ(選別)| 「電気選別機」で茎とそれ以外に分かれています。

10 仕上げ(選別)|まだ茎が残っているので、「色彩選別機」でさらに選別します。茎は白色っぽく、葉などは緑なので色で識別していきます。仕上げの工程は茎を除くことが主になります。だいぶ茎がなくなってきました。一つのお茶を作るのに、5回ほど仕上げの工程を行います。


▼この後の工程

11 火入れ|「火香」といい、茶葉の香りと味を引き出す大事な工程で社長が行います。

12 合組み|独自のお茶の味を作り、品質を安定させるためにブレンドします。

13 異物除去、袋詰、出荷|最後にもう一度異物が入っていないか確認し、袋詰めした後出荷します。

14 できあがり|ご購入した際には冷凍庫に入れておくと美味しさが長持ちします。

茎の部分だけの茎茶(地方によっては棒茶といいます)は、ほうじ茶にすると美味しいそうです。また、茶香炉のお茶は一番茶の茎を使用していますが、香りが立つように茎を軽く切断しています。清潔感があるお茶の香りもお楽しみいただけます。

3. 大正8年創業の市川製茶

100年を超える歴史を誇る伊東最古のお茶屋「市川製茶」の創業は大正8年。創業前は伊東で和菓子屋をしていた先代が、和菓子といえばお茶が合うということで生産を始めました。二代目からは賃加工だけでなく小売も始め、現在は三代目の市川正樹さんが社長として皆を引っ張っています。

静岡でお茶が盛んになったのは、幕府が開国後の輸出品として奨励していたからだそうです。昔は伊東にも茶畑がありましたが、市川製茶で扱う茶葉は静岡の茶所として有名な「牧之原」「吉田」あたりの茶畑から仕入れています。静岡の茶畑は九州の平地と違って山が多いのですが、山の霧が覆布の役割を果たし紫外線から守ってくれるので、お茶にとって良い環境となります。紫外線を浴びる量が少ないことで、甘みのあるお茶ができるのです。

工場から少し離れた伊東の「市川製茶 湯の花通り店」には、売店と2階には喫茶もあります。(現在喫茶は休業、売店のみですので随時ご確認ください。)伊東にお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。

静岡県伊東市猪戸1-2-1(伊東駅より徒歩5分)|TEL0557-37-3796|営業時間10:00〜17:00|不定休